2009.01.09 *Fri

「幸田文の箪笥の引き出し」/青木玉

年末に、バイトのために着物が必要になった友達の買い物に付き合って、いろいろ着物を見て歩きました。

着物に興味がないわけではない(むしろすごくある)のですが、小物もいっぱい必要だし、ハマったら底なしな気がして手が付けられなかった着物の世界が、ちょっと身近になりました。
とはいえ、着る機会はめったにないし、ちゃんとした場面に着ていけるような着物を買うお金もない貧乏学生なので、まだ「あこがれ」でしかない世界ですが。

というわけで、前に買っただけで読んでなかった「幸田文の箪笥の引き出し」。




まだ読みかけなのですが、この本はいいなあ。

ちょっと前までは当たり前だったはずの着物生活の楽しさと面倒くささとか、
母娘の絆とか、
それを見守る祖父の愛情とか。
(露伴は見守るなんて生ぬるいものではなかったようですが。さすが明治男、じゃなくて江戸生まれらしい)

今のところ、裁ちかけの浴衣の話が、いちばん心にひっかかってます。

と同時に、自分のメンタリティは子どもの頃からそう変ってはいないつもりだけど、情緒は育っているのだと実感。
中高生くらいの自分だったら、こういう話にここまで心に波風立ってない気がする。


それを抜きにしても、幸田文の着物の趣味が良いのです。
私にはちょっと渋すぎるものもありますが、着物世代の人の上品な遊び心は心地よいです。

着物には興味あるけど、今はやりの、赤とか紫がゴテゴテした着物は、ちょっと感覚が合いません。
若いうちはそれでもいいのかもしれないけど、年取った時にそういう着物は着られないだろうし。
それよりもっと、普段着的な地味さの中に粋なところがある感じがいい。

と思う時、着物的な色彩感覚を持ち合わせていないことが悔やまれます。
洋服なら自分が好きな色・柄のものを合わせられるけど、着物だとよく分からない。

幸田文が、娘である青木玉が黒い羽織を作る時に
「あんたはまだ黒を着こなせてない」
という内容のことを言うシーンがあるんですが、私にはそういうものが分かりません。
好きなもの着ればいいってものじゃないんだよね。

「お洋服選ぶのと同じですよ〜」なんて今はやりの着物屋さんの店員さんは言ってくれそうだけど、着物の形をした洋服ではなくて、昔の人がごくごく普通に着ていたようなものを、当時の着物の感覚の中で着たいのです。
レトロモダンとかどうでもいいんだ。
かわいいとは思うけど、私が着たいのはそういうのじゃない。

私の祖母は二人とも亡くなって久しいのですが、どうやら彼女たちは着物暮らしが長かったらしいことを、最近になって知りました。
おばあちゃんにはもっといろんなこと教わりたかったなあ。

懐古主義的になりますが、やっぱり昔のものが失われていくこと、昔の素敵なものを受け継げないことは哀しいと思います。



幸田文の箪笥の引き出し (新潮文庫)幸田文の箪笥の引き出し (新潮文庫)
(2000/08)
青木 玉

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